税制改正(平成28年度)解説シリーズ4(法人の税金:法人税)

さて今回から、税制改正(平成28年度)解説シリーズ4として、法人に関する税金(法人税)に関する改正内容を紹介させていただきます。

各種報道でも出ているように、法人に対する税率(実効税率)を下げて国際競争力を上げる、という名目のもと段階的に税率の引き下げが予定されており、今回も予定通り0.5%引き下げられます。

 またこの引き下げによる税収減を補うためとして、課税ベースを拡大する改正が入る事となりました。

 それではこれらの概要についてご紹介させていただきます。

 
1. 法人税率の引き下げ関連

法人税率(現行23.9%)について、次の通り段階的に引き下げられます。

(1) 平成28年4月1日以後に開始する事業年度・・・23.4%
(2) 平成30年4月1日以後に開始する事業年度・・・23.2%

 ※中小法人の年8,000千円以下の部分は15%の法人税率で変更ありません


2. 生産性向上設備投資促進税制の廃止

 アベノミクスにおいて企業の積極的な投資促進のため設けられた生産性向上設備投資促進税制(税額控除又は特別償却)は適用期限である平成29年3月31日を以て廃止される事が明記されました。

 租税特別措置法で時限立法的に設けられたこの制度、通常は経済刺激策の一環として内容の一部変更はあっても特例自体は継続する事が多いのですが、1の税率引き下げによる財源確保のために廃止される事となりました。

 また、その取得価額の全額が経費化できる“即時償却”と税額控除率の上乗せ措置は平成28年3月31日までとなっていますので、投資を検討されている場合にはご留意ください。

3. 減価償却制度の見直し

 この改正の内容は、従来定率法を採用できた次の固定資産について、平成28年4月1日以後に取得をするものから次の償却方法のみを採用できる事にするというものです。

(1) 建物付属設備及び構築物(下記(2)を除く)・・・定額法
(2) 鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物のみ)
・・・定額法又は生産高比例法

この見直しも法人税率引き下げによる税収バランスを確保するための課税ベースの拡大の一つの改正です。

なお、建物附属設備とは、電気設備、給排水・衛生設備、エレベーターなどの主に建物本体に附属する設備類を言い、構築物とは広告塔や庭園設備、駐車場のアスファルト敷部分など、主に土地に固定された建造物の事を言います

これら固定資産は高額になるケースも多く、定率法が採用できるか否かで初期の経費計上額が大きく変わってきますので、これら投資を考えていらっしゃる場合には適用開始時期にご留意ください。


4. 欠損金額の繰越控除制度等の見直し

欠損金額とは過去の赤字(税務上の)の金額です。以前は制限がなく当期に発生した利益と全額ぶつけることにより納税が発生しないというケースがありました。

しかし税収確保の観点で、以前の改正で欠損金額の一部しかぶつけられない=過去にどれだけ累積の赤字があっても納税が発生する、という取り扱いに変わっていました。

この制度について今回下記の改正が設けられました。

なお(1)の欠損金の利用制限は、現状大法人(資本金1億円以上)のみの取り扱いとなっています。

(1) 欠損金繰越制度の見直し

平成27年度の税制改正で定められた“欠損金を利用することができる割合“が、次の通り毎年減少していく事に改められました。記載させていただいた通り、欠損金額の50%までしか使えない事となる時期は平成30年4月以後、と1年間先になりました。(なお期間はいずれも、その期間内に開始する事業年度を指します)

① 平成27年改正時
・平成27年4月~平成29年3月・・・100分の65
・平成29年4月~       ・・・100分の50

② 今回の改正(平成28年改正)
・平成27年4月~平成28年3月・・・100分の65
・平成28年4月~平成29年3月・・・100分の60
・平成29年4月~平成30年3月・・・100分の55
・平成30年4月~       ・・・100分の50

(2) 欠損金利用期間の延長

 上記(1)の改正を受けて、従来9年間だった欠損金の利用期間が10年間に延長されました。欠損金を使える割合が減った分、使える期間は伸ばしましょう、という趣旨になります。

  またこれに合わせて、
    ・帳簿書類の保存期間
    ・更正の期間(税務署が申告内容の修正をできる期間)および、

    更正の請求の期間(納税者側が申告書修正による還付を申請できる期間)
  も9年から10年間に延長されています。


それでは今回はここまでとさせていただきます。

次回は、法人の税金に関する改正の中で地方税に関する改正概要についてご案内させていただきます。

昨今の一極集中化、地域格差を念頭に大きな改正が入っていますので楽しみにお待ちいただければ幸いです。

2016年02月17日