税制改正(平成28年度)解説シリーズ3(個人の税金:所得税等その3)

さて今回も前回に引き続き、税制改正(平成28年度)解説シリーズ3として、所得税(個人に対する課税)に関する改正内容及び個人関連の改正概要を案内させていただきます。
  
1. 生命保険料控除等の申告書添付書類緩和

生命保険料控除や地震保険控除、寄附金控除をふける際には申告書に控除証明書等を添付しなければいけません。確定申告の時期にこれらの書類を慌てて探して結局は再発行をしてもらったというケースも少なくないと思います。

さて今回の税制改正で盛り込まれたのが、この添付要件の緩和措置です。
従来であれば保険会社等が発行した証明書そのものの添付が必要とされていましたが、この改正で電子メール等により送られたものを印刷したものでも良い、と改正されます。

もちろん“偽造で無いことが分かるようになっているもの”という要件も付いていますが、その手当は保険会社等のほうで対応する事になりますので、私たち納税者の申告手続が便利になる事になります。

2. マイナンバー記載書類の範囲の見直し(縮小)

この平成28年度から始まったマイナンバーの制度、記載が必要な書類として一番に挙がってくる書類は扶養控除申告書ではないでしょうか?
このマイナンバーは扶養控除申告書だけではなく、色々な書類に記載をすべく税制改正において多数の申告書、届出書、申請書の様式が改正されています。

しかし、マイナンバーは一度設定されると基本的には変わらない事とされていますので、一度提出した先に対して何度も何度もマイナンバーを記載して提出するのは事務の手間をかけるだけになります。

そこで、今回の改正で次のような書類についてはマイナンバーの記載が不要とされました。これら以外にも所得税に関する広範囲の届出書類が記載省略となっており、来年以降は事務の煩雑さが低減する事となります
(なお改正は平成29年分の所得税から適用予定とされていますので、平成28年分所得税に関するものについては届出書等の様式の通り、マイナンバーを記載する必要があります。


(1) 給与所得者の扶養控除申告書
(2) 退職所得の受給に関する申告書
(3) 公的年金等の受給者の扶養控除等申告書
(4) 青色申告承認申請書
(5) 所得税の棚卸資産の評価方法の届出書

3. 国民健康保険税の課税限度額の引き上げ

我が国の社会保険制度の一翼を担う国民健康保険ですが、実はこの“保険料”については、“国民健康保険料”の自治体と“国民健康保険税”の2種類があります。

給付自体は変わらないのですが、細かい部分では例えば、前者が遡って2年分しか徴収できないのに対して後者は5年間徴収が可能、というような違いがあります(後者は税、すなわち地方税法の1種なので、税法の“時効=5年間”が適用されます。

多くの自治体では保険料ですが、例えば近畿では伊丹市、大東市などが保険税となっています。
この国民健康保険税の課税限度額が次のように引き上げられます。

(1) 国民健康保険税基礎課税額に係る課税限度額 52万円→54万円
(2) 後期高齢者支援金等課税限度額 17万円→19万円

国民健康保険税(料)は所得の高い方のは限度額で負担されている方もいらっしゃいますが、そのような方の年間負担額が合計4万円増加するということになります。

それでは今回はここまでとさせていただきます。

次回は、法人税に関する改正概要についてのご案内をスタートさせていただきたいと思います。

2016年02月04日