税制改正(平成28年度)解説シリーズ1(個人の税金:所得税その1)

今回は、平成28年税制改正大綱概要の概要解説(その1)として、所得税(個人に対する課税)についての主な改正内容を案内させていただきます。

税制改正の目的ですが、第一には社会情勢に合わせた税収の適正化、公平化のための変更という面がありますが、同時に“国の施策への誘導策”、“業界振興”などの目的もあります。

今回の所得税(個人に対する課税)の改正内容についても、国が進めている政策を後押しする施策が多々盛り込まれています。

1. 相続取得の空家を売却した際の30,000千円控除(譲渡所得の特別控除)の導入
この特例は、今国が全国的に促進している空き家対策の一環として、相続が原因で発生する遊休不動産の有効活用を促進するためのインセンティブとして導入される制度です。
なお、

概要は次の通りです。
 下記いずれかに該当する場合、居住用財産の譲渡所得の30,000千円控除の適用対象とします。
(1) 相続により生じた空き家(譲渡まで未使用。以下同じ)であって旧耐震基準しか満たしていないものに関し必要な耐震改修を行い譲渡した場合
(2) 相続により生じた空き家を除却し、その敷地を譲渡した場合

2. 住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設
この特例は、現在国が取り組んでいる少子高齢化対策の一環として世代間の助け合いによる子育てを支援する観点から、三世代同居を推進するための後押しとして設けられた施策です。
概要は次の通りです。
住宅について一定の三世代同居改修工事を含む増改築等を行う場合、下記のいずれかの特例適用を受ける事ができます。
(1)住宅ローン控除
  ローンの年末残高の下記区分に応じて、それぞれに定める金額の合計額を所得税額から控除します。なお、控除期間は5年間とします。
① 工事費用の250万円までの金額・・・ローン残高の2%相当額
② ①以外のローン残高(10,000千円を限度)の1%相当額


(2)既に居住している家屋についての特別控除
 その改修工事費用(250万円まで)の10%相当額をその年の所得税額から控除します(1年限りです)

なおいずれの場合もその年分の合計所得金額が30,000千円を超える場合には適用を受ける事ができません。

3. 海外在住中に住宅新築をした場合の住宅取得等優遇税制の特例

日本では以前から住宅ローン控除などの持ち家の取得、増改築などの投資を後押しする税制が存在しました。
ただし、日本国内の景気刺激策として導入されている税制であるため、その対象、対象者を”国内“に絞ってきました。

それが一部緩和されるのが今回の税制改正です。

具体的には、海外赴任中に日本に帰国した後の家を建てて置いた場合、今までは住宅ローン控除などの優遇税制の適用を受ける事は出来ませんでした。

この場合に住宅ローン控除などの住宅優遇税制の適用を受ける事ができる事になります。

今回緩和される事となる住宅優遇税制は次のとおりです。

(1) 住宅ローン控除
(2) 特定の増改築を住宅ローンを使って行った場合の特別控除
(3) 既存住宅への耐震改修をした場合の特別控除
(4) 既存住宅の特定改修をした場合の特別控除
(5) 認定住宅の新築等をした場合の特別控除

それでは今回はここまでとさせていただき、次回は個人の税金に関する税制改正その2をご紹介させていただきます。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!


2016年01月23日